2009年7月6日月曜日

ジョゼと虎と魚たち(犬童一心監督)



これは映画のほうで見させていただきました。恒夫(妻夫木君)とジョゼ(池脇千鶴)と香苗(上野樹里)の三人が主な登場人物。他にも魅力的な人物がいますが、何か長くなりそうなので割愛します。

一言で言えば、「切ないラブストーリー」といったところです。香苗と付き合っていた恒夫は、足が不自由な少女ジョゼに惹かれ乗り換えますが、結局は身体障害者という苦難から逃げ出して香苗とヨリを戻すという、これだけ聞けばひどい恋愛話。

ですが、訴えたかったのは人の「弱さ」なのではないかと感じました。その説明の前に登場人物の紹介をすると、
恒夫: 遊び人の大学生で香苗とはほぼSEX目的で交際を始める。変わった魅力を持つジョゼに惹かれて一時期恋をする。
ジョゼ: 強気な女の子で、勝気な男のような性格をしている。が、毎日花と猫を見たいがために散歩をするというギャップを持っている(恒夫の惹かれたところ)。
香苗: これまた遊び人の大学生で、男を手に入れようとSEXも全く辞さない。

恒夫もジョゼも、お互いいつかは別れることになると分かっていたのではないか、と自分は勝手に思っています。そんな中での恒夫の「弱さ」は、真剣に愛したジョゼとでさえも遊びの恋にしてしまったことではないでしょうか。真剣に向き合うのが怖くてそうしてしまうのだろうか。しかも、香苗とヨリを戻すラストでは泣き崩れてしまいます。中途半端な自分とジョゼを傷つけてしまったこととに涙が出たのだと思いますが、それを理解したうえでヨリを戻してしまうという、如実に弱さが出ていたシーンに見えます。
香苗の「弱さ」は、彼氏を取られた苛立ちで、車椅子のジョゼを叩いてしまったところです。その直後に彼女も後悔していて、人の行動は目先の欲望に左右されるのだな、、と切ない気持ちになってしまいました。
ジョゼは捨てられたあとも一人で強く生きていく姿がラストシーンで映され、強い女性のように描かれますが、実は一番弱い女性だったのかなと感じます。自分を最も見てくれた恒夫に「一生ここにいてくれ」と懇願したり、一時期の思い出を求めて虎や魚を見に行ったりとします。きっと彼女には身体障害者というコンプレックスがあり、(一時期でも)愛している(と思える)人と一緒に過ごしたという想い出だけでもないと心が崩れてしまったのだと思います。しかし、外に出歩けない彼女にはもう恋愛の機会はないのですが、果たしてこれで幸せだったのか。。幸せにはなれないと確信しつつ心の隙間を埋めようとし、さらに心の隙間を広げてしまっただけではないか。。

ハッピーエンドとはいえない終わり方で、何とも重い気分になります。「人って所詮こんなものなのだよ」という作者の声が、耳をふさいでいても頭に響いてくるような、そんな映画でした。

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